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一億総切手狂の時代
2006.11.15
一億総切手狂の時代 ~ 昭和元禄切手絵巻 ~ 1966-1971
解説・戦後記念切手Ⅳ 内藤陽介 著
戦後記念切手の“読む事典” ついに、大阪万博の時代へ
大好評シリーズの第4弾が登場です!
今回の収録は、日本が高度経済成長へ突き進む、大阪万博の時代(封書料金15円時代の終わり)まで。
時計の針を戻すことができるなら、
迷うことなく 1970年に帰る。
理由はひとつ。
これまでの人生の中で、もっとも多くの収友に囲まれた年だったからだ。
1970年――ボクは9歳。通っていた小学校で、それまでせいぜい三割程度だった切手収集家の数が、 大阪万博開幕の3月をさかいに、急増した。恐らく我がクラスの収集家率は、八割にも達していただろう。
もっともこれは子供の世界に限ったことではない。
今となっては信じがたいことであるが、新切手の発行日には、親父も近所のおばさんも、何かに憑かれたように、 郵便局の前に並んだものだ。まさに“一億総切手狂の時代”である。
本書は〈解説・戦後記念切手〉シリーズの第四弾。1946年から出発した壮大な戦後記念探訪の旅は、ようやくボクの時代へとやってきた。
取りあげられているのは、万博世代の切手少年なら、おなじみの切手ばかり。正確にいうと、 1966年の「ユネスコ創立20周年」から1971年の「政府印刷事業100年」まで。「魚介シリーズ」と「名園シリーズ」の一部を除く 、封書料金15円期の記念切手のすべてだ。
「国際観光年」や「国宝シリーズ」、「古典芸能シリーズ」といったスターが、次々と登場する。中でも圧巻なのは、 「万博切手」に関する長い長い記述。当時の国民の熱狂と、それに対する郵政省サイドの反応が、過不足なく伝わってくる。決して “お客様は神様です”じゃなかったのが、わかる。
また、この時期は、郵便史上の大転換点でもあった。
郵便法の大幅改正に、郵便の自動化にともなう色検知と郵便番号の導入である。本書では、これらについても詳述されている。あまりにも詳しすぎて、 ゲラを見せてもらった段階で、「マニアックすぎない?」とチェックを入れたぐらいだ。
そして、トリビアの類も実に豊富。
相次ぐ盗作騒動に揺れた公募図案切手や、“成人向き指定”と呼ばれた趣味週間切手、国宝切手の題材に選ばれながら、 「ご本尊さまの顔を消印で汚されたくない」と断った住職の話など、小ネタがギッシリ詰めこまれている。
9歳のボクのクラスメートに読ませたかったな、と思う。きっと奴らは、切手の持つ懐の深さと、思わぬ一面を知り仰天したに違いない。 ならば……収友たちが、その後、切手集めを放棄してしまうことなんてなかったろうに、とも思うのだ。
なんとも悔やまれることである――。
評者・いのうえまさと
昨年1年間、本誌の連載「今日も切手日和」を執筆。収集家の日々の悲哀を描いた軽妙な文章は、読者の多大な共感を得た。
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