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| ●…カリブ海の火山島 カリブ海の東縁には、ちょうど東シナ海と太平洋の間に奄美や沖縄の島々が連なるように、千数百キロにわたって新旧の小さな火山性の島々が弧状に並んでいます。セントビンセント島やその南のグレナディーン諸島は、このウィンドワード諸島の南部にありますが、少々世界地理に自信のある方でも知らない人が多いでしょう。しかし、フィラテリストなら、誰でもご存知のはず。とくに動植物や人物などのトピカル(テーマチク)のコレクターなら、きっとこの国の切手がアルバムのどこかに収められているに違いありません。 セントビンセント島のスフリエル火山は、今世紀はじめに噴火しましたが、今は比較的落着いています。この島国にとって恐ろしいのは、火山爆発よりも、時折襲ってくる強烈なハリケーン。バナナや砂糖キビなど、島の農作物に大きな被害を与えるからです。このあたりも、奄美や沖縄に似ています。 ●…“カリブ分割”の末に 奄美や沖縄の島々が「琉球文化圏」として、日本列島を構成するもう一つの文化圏を形成しているのに対し、カリブの島々は文化的に大変複雑です。それと言うのも、16~17世紀以後、スペインのほか、英・仏・オランダ、さらにはデンマークも加わって、互いに島々を奪い合った結果、今もその領有が島ごとに入り乱れているからです。 セントビンセント島が英国船によって発見された17世紀初めは、付近の他の島々と同様、僅かな先住民が居住するほとんど無人に近い島でした。しかし、北アメリカの領有をめぐる英・仏の激しい争いの中で、この島もその争奪が繰返され、2回までもフランスに奪われましたが、18世紀末にようやく英領に確定したのでした。 1979年、カリブ海の島々でも民族運動が高まる中で、日本の種子島より小さな400平方㌔㍍にも満たない小国ながら、セントビンセントは英連邦の一員として独立しました。 |
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| ●…奴隷制度の置き土産 これらの熱帯の小さな島々がヨーロッパ列強にとって魅力的に映ったのは、豊かな熱帯の農産物でした。なかでも甘庶糖のとれる砂糖キビが注目されます。当時ヨーロッパでは砂糖ダイコンからとる甜菜糖が使われていましたが、砂糖需要の高まりの中で、比較的安価に、しかも大量にとれる甘庶糖の生産は企業家にとって大きな魅力でした。 こうして、セントビンセント島でも砂糖キビ栽培がはじまりましたが、農園主にとっての悩みは労働力不足。そのため、大量の黒人奴隷がアフリカからつれてこられたのでした。この島国の人口は11万ほどですが、そのほとんどがこうした黒人奴隷の子孫です。 切手の表示からもわかるように、この国の公用語は英語ですが、奴隷制度とフランス領時代の名残りのために、フランス語とアフリカ系の言語の混合語として発達したパトア語が日常的には広く使われています。かつては品の良くない言語とされていたパトア語も、ナショナリズムの高まりの中で、次第に見直されてきました。 ●…切手の変遷 ビクトリア女王を描いたセントビンセントの一番切手の発行は1861年のこと。このカリブの小国が、日本の竜文切手より10年も早く切手を発行していたのは驚きです。 英領に共通する凹版の美しい風景や地域の伝統産業などを描いた「地理シリーズ」は1938年から発行されますが、50年代までは、むしろ地味な切手が多く、発行政策も消極的でした。ところが、60年代に入るとグラビア印刷を中心に発行政策は次第に積極的になり、70年代にはそれがますます加速され、80年代に入るとテーマはいわば“国際的”になり、米国大リーグの野球選手や著名な映画俳優を描くブロマイドのような切手が続々発行されはじめました。遂に’93年には、わが石原祐次郎も颯爽と登場しますが、こうした傾向は今も続いています。 なお、’92年からは、国名表示が「セントビンセント」から「セントビンセントおよびグレナディーン諸島、 ST.VINCENT&THE GRENADINES」に変わります。 まぎらわしいのは、1973年から「GRENADINES OF ST. VINCENT」と表示された切手が、セントビンセントの切手とほぼ並行して、シリーズものなどで大量に発行されていたことです。この“グレナディーン諸島”はセントビンセント島とそのはるか南方のグレナダ島との間に連なる小さな島々で、その北半分がセントビンセント領。しかし、’94年の「薬草シリーズ」を最後に、発行が中止されています。 |
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| ワールドカップ・サッカー2010 8種シート×4/
セントビンセント・グレナディーン
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| 2010年1月20日発行 参加全32カ国を8カ国ずつ収めるシート4枚(中央にタブ)。 |
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| 国めぐりこぼれ話 |
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| ふるさと切手考|ベキア島とユニオン島の切手 これといった資源や産業をもたない小国にとって、収集家を主な対象とした切手の発行は、確かに大切な財源である。 セントビンセントも、まさに切手立国を国是とするような国の一つ。そのためご当地版「ふるさと切手」を《グレナディーン諸島》が独自に発行していたが、それだけではあきたらず、さらにその中の主な島であるベキア島とユニオン島でも84年にそれぞれ独自の切手を発行していた。しかし、いずれも数年後には発行を中止しており、グレナディーン諸島も、その後間もなく発行をとりやめている。 いずれも小さな島々なので、動植物や船などにしても、これといった珍しいテーマもないうえに、アクセスが困難なためか、現地取材をさけ、ほとんど机上でまとめていたことも、トピカル収集家から見離された一因かと思われる。 日本の.「ふるさと切手」が、それなりに人気があるのは、実際の使用者がかなりの数にのぼることに加えて、何よりもこうした切手に不可欠な、それぞれの地域の風土性が豊かに感じられるためだろうか。 |
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| ※このコーナーは「続・世界国めぐり」(2004年刊行)から引用しています。 内容が現在と異なる場合があります。 |
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| この記事が掲載されている本はこちら です | ||||||||||