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グレナダ ─世界切手国めぐり─
2009.11.06
●…《西インド諸島連邦》の夢のあとで
カリブ海の東側を縁取る小アンチル諸島には、小さな島国が並んでいます。その南端が面積344k㎡、淡路島の半分よりやや大きなグレナダ。人口はわずか9万ほどで、その8割近くがアフリカ系の黒人です。
これらの小さな島国に分かれているカリブ海の島々では、かつて英国が1958年に、ジャマイカからトリニダード・トバゴに至る英領の島々を打って一丸とした自治領《西インド諸島連邦》を組織させたことがあります。しかし島々の利害が対立し、結局、数年後の1962年には、その壮大な夢は破れ、《西インド諸島連邦》は解体してしまいました。
グレナダが単独で英連邦の一員として独立したのは、1974年のことでした。
●…世界初のUFO切手のかげで
最近でこそ切手の図案としてマンガが登場したり、ホラー映画の1シーンを思わせるようなものまでみられるようになりましたが、グレナダでは1978年に、早くもUFOの切手が発行され、話題になりました。
この国の初代首相ゲーリーは、大のUFOファンだったのです。彼はその前年に国連総会でUFO研究の必要性を強調した演説をしているほどです。
ゲーリーは、確かに“建国の父”ではありましたが、反対派を秘密警察に監視させるなど、国内では独裁者として恐れられていました。身の危険を感じ、亡命する政治家も多く、政情不安が続きました。
ゲーリーは、やがてクーデターで政権を追われますが、新たに成立した左翼政権内部の抗争で、再びクーデターが起こり、急速にキューバやソ連に接近したため、米国や東カリブ諸国による軍事介入を招くことになりました。
グレナダ Greada
面積:344平方㌔㍍ 人口:9万人
首都:セントジョーンズ(3万6000人)
国 旗
住民:黒人82%、混血人13%
言語:英語が公用語。
宗教:英国国教会とカトリックが中心。
資源:ナツメグなど農作物・魚介類
通貨:東カリブドル
●…砂糖キビからナツメグへ
大航海時代のあと、カリブ海の島々は、フランスと英国との間で激しい争奪が行われますが、グレナダは18世紀中頃に英領が確定しました。ここでは当時、花形の国際商品のひとつ、甘蔗(砂糖キビ)糖製造のため、砂糖キビ栽培が発展し、一時は島の基幹産業になりました。そこで問題になったのが労働力。島にはカリブ族のインディアンが住んでいましたが、プランテーションの労働力にはなりませんでした。
そのため、英国人の農場経営者たちは、アフリカから黒人奴隷を大量に受入れることになります。この間、先住民族のインディアンは伝染病などで死亡することが多く、また混血などが進んだため、次第に人口が減少していきました。他方、黒人奴隷とその子孫は急速にその数を増し、現在では人口の8割近くがアフリカ系黒人の子孫です。このように、人種や民族がそっくり入れ替わる現象は、西インド諸島の多くの島々で見られます。
一方、久しく精糖を基幹産業としてきたこの国では、糖価の低迷が続くために、遙かに利益のあがるナツメグなど香料作物の栽培に切替えられていきました。ナツメグは“ニクズク”とも呼ばれ、主としてその種子を粉末にしたものがスパイスとして用いられています。ハンバーグなどの肉料理に日常的に使われるご家庭も、今では少なくないでしょう。
●…切手の変遷
グレナダの一番切手は1861年。若き日の美しいヴィクトリア女王の肖像が描かれたものでした。英領植民地に見られる格調の高い凹版の“地理シリーズ”は、1934年に発行されました。
その後、切手の発行はなぜか控え目になりましたが、'66年のグラビアによって島の風景や産業などを描く新しい“地理シリーズ”の発行を契機に、発行政策はにわかに積極的になります。
美しい熱帯の海のリゾートをPRする観光切手とともに、この国とはほとんど何の関わりもない図案のものが次々と発行されるようになりました。この傾向は年とともに強まり、先のUFOをはじめ、'79年にはディズニー漫画も登場。ジュニアに人気のあるこのシリーズは、その後も繰返し発行されています。
乱発傾向は著しく、'90年代には毎年250種から300種近くに及んでいます。これは恐らく国別の収集家よりトピカル(テーマチク)のフィラテリストを意識したものでしょう。
イヌ/スポーティンググループ 4種シート
2009年4月29日発行。
ゴールデンレトリバー。アメリカンケンネルクラブ設立125年記念。
■グレナディーン諸島の切手
グレナディーン諸島は、グレナダ島とセントビンセント島との間、100キロ余りにわたって連なる列島状の小島群で、グレナダ領とセントビンセント領に分割されている。その過半を占めるセントビンセントは正式国名を《セントビンセント・グレナディーン諸島》と称し、島名は国名にまで組込まれている。
一方、グレナダは、島嶼群のごく一部を領有するに過ぎないためか、国名には含めないが、切手の世界では、《グレナダ領グレナディーン諸島》として、これらの島々のために独自の切手を発行している。ここでも著しい乱発が続いているのは言うまでもない。
これは、原理的には、わが国の〝ふるさと切手〟に近いが、唯一異なる点が、これらの島々の風物に取材した図案も〝グレナダ本島〟で発行したものの単なるバリエーションに過ぎないものが圧倒的に多いことである。内外に多少の批判があるとはいえ〝ふるさと〟の紹介を旨とするわが国の方が、いささかなりとも良心的と言えるかもしれない。
※このコーナーは
「続・世界国めぐり」(2004年刊行)
から引用しています。
内容が現在と異なる場合があります。
この記事が掲載されている本はこちら です
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