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甦る小林かいち 都モダンの絵封筒
2009.03.26
生田 誠・石川桂子共編
都モダンの乙女たちを陶酔させた掌の美!
小林かいち
の極上の意匠が細長い絵封筒の小宇宙にエレガントに花ひらく。
250点を越す絵封筒をほぼ原寸のオールカラーで収録。
小林かいち、ってご存じですか? 昭和を代表する意匠家、すなわちデザイナーです。これまで、竹久夢二や蕗谷虹児のかげに隠れていた小林かいちが、近年脚光を浴びています。ぜひ、本書をひもといて、かいちの素晴らしい絵封筒の世界を目にしてみていただきたいと思います。ページに繰り広げられる目にも鮮やかな、そしてロマンティズムに彩られた美しい絵封筒の世界に、いつしか我を忘れるはず。
大正12年、大震災が関東を襲います。首都圏では、あらゆる分野で機能が停滞し、関西圏がさまざまな活動を肩代わりします。たとえば、切手も関西で急きょ印刷されるのですが、大正ロマンティズムのなか、竹久夢二や蕗谷虹児の活躍で、女性たちに人気を得ていた絵葉書など、ステーショナリー(文具類)の世界も同じでした。
このとき、京都の版元・さくら井屋から、素晴らしい絵葉書や絵封筒が発行されます。作者の名は小林かいちという、この世界ではさほど知られていない名前。しかし、その作風は新鮮で、不思議な魅力があり、登場するや、女性たちの心を虜にしてしまったのです。
本書「甦る小林かいち 都モダンの絵封筒」は、小林かいちの主な活躍の場だった、彼の絵封筒の魅惑的な世界を初めて本格的に紹介したものです。絵封筒とは、封筒の表面に美しい印刷を施したもの。いまも若い女性たちにとっても、ステーショナリーは大切なものですが、いまに比べ楽しみの少ない当時は、なおさらのことでした。
かいちの絵封筒には、大正時代の女性たちの西洋的なものへの憧れが描かれています。モダニズム的な街のシルエット、教会、塔、ガス灯、廃墟…。しかし、そうした画題はただバタ臭いのではありません。そこには、和のセンスも感じられるのです。
もともと、かいちは友禅染めの図案家であり、洋風の画題のなかに、おのずと京都の琳派的な感覚、円山四条派的なセンスが活きているのです。この洋と和の表現は、絵封筒に描かれた女性たちの姿にも、表れています。前期・中期には絵封筒を飾った女性像は、モガ(モダン・ガール)、後期に描かれるのは、京都の舞妓や芸妓。そうした女性像は縦長の絵封筒にマッチして、細長く描かれ、あえて顔が描かれていない彼女たちは、街に溶け込み、独特の世界に昇華しているのです。
そして、もうひとつ、かいちの絵封筒を、この上なく美しいものにしている秘密があります。
それは日本伝統の木版によって、摺り上げられたグラデーションの素晴らしさ…。
近年、小林かいちの再評価が高まり、個展が各地で見られるようになりました。どうぞ、あなたも、かいちの魅力に触れてみてください。それは、一度惹き込まれると、忘れられなくなる不思議な世界なのです。
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